慢性前立腺炎で苦しまれている患者さんの90%は、細菌感染が認められない「非細菌性慢性前立腺炎」といわれています。
検査で細菌が証明されないにもかかわらず、無意味な抗生剤の長期投与やセルニルトン投与・漢方薬で漫然と治療されるので患者さんはたまったものではありません。挙句の果てに「治らない病気です」、「ストレスが原因です」、「心の病気です」「気にしないようにしましょう」と医師が口にするのです。この心ない言葉に患者さんは「心が折られ」途方に暮れる、そんなエピソードが「ちまた」に溢れています。

私が泌尿器科医(1979年から)になって30年以上も経過していますが、そのずっとずっと前から慢性前立腺炎という病気はすでに存在し、その検査も診断も、そして治療も進歩しているとは、お世辞にも思えません。泌尿器科の教科書には、慢性前立腺炎についてたった数行しか記載されていません。

2002年、慢性前立腺炎で悩まれていたタクシー運転手さんに、わずかながら「排尿障害」を認めました。たまたま「排尿障害」が気になったので、排尿障害の治療を実施したところ、慢性前立腺炎症状が著しく改善したのです。このエピソードを契機に、慢性前立腺炎の患者さんを「感染症以外」の観点から調べることにしたのです。すると患者さん本人の認識にかかわらず、ほとんどの方に何らかの「排尿障害」あるいは「排出障害」が存在していることが判明しました。そしてその「排尿障害」の治療で「慢性前立腺炎」治療に飛躍的な結果を出すことができたのです。私はこの排尿障害を「隠れ排尿障害」と呼んでいますが、その原因の多くが「膀胱頚部硬化症」別名「膀胱頚部閉塞症」や「前立腺肥大症」です。

ブログに掲載した実例を次にご紹介します。


「慢性前立腺炎」 17年間の闘病

17年前に私立医科大学病院で「慢性前立腺炎」と診断され、点滴治療で「痛み」症状がいったんは改善しましたが、その後も症状は波のある状態で不安定なまま過ごして来ました。
ところが、平成21年4月頃より急に「痛み」症状が悪化し、東京の国立病院、有名個人病院、私立医科大学病院などの泌尿器科を10軒以上転々と診断と治療を受けましたが、「非細菌性慢性前立腺炎」「気のせい」「気長に・・・」などと言われ、心療内科も2軒通院していました。そして高橋クリニックに平成22年1月来院しました。

この写真は初診時の超音波エコー検査のものです。前立腺の大きさは22ccとほぼ正常の大きさですが、膀胱出口の硬化像、膀胱三角部の肥厚、膀胱括約筋の肥厚・ワニ口変形、さらには前立腺結石を認めます。
痛みなどの関連痛の原因は、この肥厚した膀胱三角部が元凶と私は信じています。

流量測定検査(ウロフロメトリー)では、ご覧のようにタラタラの排尿曲線です。極端な排尿障害を認めます。121mlの尿を67秒もかかって排尿しているのです。
初診時の症状は、ヒリヒリした「会陰部の痛み」で、夜眠ることができません。また、排尿前には陰茎根部に痛みが、排尿後には尿道全体に痛みが走ります。
頻尿は1日13回、排尿障害も自覚していて、尿流量測定検査(ウロフロメトリー)で示すように途切れ途切れのおしっこで苦しんでいます。食欲が落ち、72kgあった体重が初診時は63kgです。
早速、α-ブロッカーを処方しました。症状は本人が自覚できる程にまで軽快しました。しかし17年間も苦しんだので今回こそ何とかしたいと内視鏡手術を強く希望され、平成22年の2月に内視鏡手術を実施しました。
(注:この患者さんのように内服薬で十分コントロールできるのであれば、内視鏡手術を行う必要はまったくありません。手術を行うかどうかの判断は患者さんの希望だけです。)

内視鏡手術直前の所見です。
膀胱頚部硬化症の特徴である「柵形成Bar in the sky」(http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/2004/08/bar_in_the_sky.html)を認めます。
直径たった5mmの電気メスの半円状ループが大きく見えてしまうほど小さな膀胱出口(画面最上部に見える黒い穴)です。

内視鏡手術直後の所見です。
わずか1.1gの切除ですが、「柵形成」は消失しました。手術による前立腺の直接被害もわずかです。慢性前立腺炎の関連痛症状の原因である過敏になった膀胱三角部も処置しています。

内視鏡手術4ヵ月後の超音波エコー検査の所見です。
前立腺の大きさはほとんど変わりませんが、膀胱出口の硬化像はなくなり、膀胱三角部も薄くなっています。

尿流量測定検査(ウロフロメトリー)では、全くの正常ではありませんが、術前の検査と比較すれば何とまとまりのある排尿曲線でしょう。
肝心の症状については、1日の頻尿が7回以下、会陰部と陰茎と尿道の痛みはそれぞれ完全消失、食欲も出て体重は63kgから70kgに増加しました。嬉しいことがあります。60才にもかかわらず「朝立ち」で目覚めるというのです。以前であれば考えられないことです。
17年間の苦しみから解放されたと、平成22年6月30日現在とても喜ばれています。奥様も人柄が変わった(もちろん良い方に)と喜ばれています。

以上が実例です。


毎年開催される日本泌尿器科学会で幾度となく、この問題について報告していますが、一般的にはまだまだ十分には認知されていません。不本意ながら私自身さえも懐疑的な扱いを受けています。
「非細菌性慢性前立腺炎の本質が排尿障害である」という命題を真理と信じ、下記のカテゴリー別に論じています。慢性前立腺炎で悩まれている男性の方は、是非お読み下さい。

慢性前立腺炎の症状
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7049655/index.html

慢性前立腺炎の考え方
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7049654/index.html

慢性前立腺炎の検査
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7049656/index.html

慢性前立腺炎の保存的治療
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7049661/index.html

慢性前立腺炎の外科的治療
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7055120/index.html

患者さんからのレポート
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7049660/index.html

慢性前立腺炎の実例
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7060985/index.html

学会報告・文献的考察
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/cat7056290/index.html



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